
【浅葱色のアサギマダラ】
浅葱色と茶色の美しい斑模様。アサギマダラの名前は、この優美な翅の色に由来します。5月頃から舞い始めるとても美しい蝶です。
幼虫の時の食草は、毒性のアルカロイドを多く含むガガイモ科の植物です。それらを体内に取り込むことで捕食者から身を守り、成蝶になってからもヒヨドリバナやフジバカマなど、ピロリジジンアルカロイドを含む蜜を吸って有毒成分を蓄え、攻撃から身を守っています。ゆったりふわふわと舞うのも、有毒であることを鳥たちにアピールするためと考えられています。
アサギマダラは全国で見ることができますが、沖縄から北海道まで、2000キロ以上の旅をすることでも知られる不思議な蝶です。時には南西諸島や台湾まで渡ることから「渡り蝶」とも呼ばれます。
この小さな命がなぜ長距離を飛ぶのか──その理由はいまだ解き明かされていませんが、旅の途中でフジバカマやヒヨドリバナの花を好んで訪れ、蜜を吸いながら栄養を蓄えます。まるで旅人が宿場町を頼りに進むように、花の道をたどっていきます。
この写真では、初夏のタニウツギの花を訪れていますが、アサギマダラの存続を願う方は、ぜひ秋の七草のひとつ、フジバカマやヒヨドリバナを植えてあげてください。もし近くにアサギマダラがいれば、必ず訪花します。みんなで花の道をつくりましょう。
古代より日本人に親しまれてきた浅葱色は、藍染の初期段階で現れるごく淡い水色です。「浅葱に銀のひとつ紋」は武士の裃(かみしも)につけられた大きな銀の紋で、夏の明るい宵闇にぽーんと上がる月を表すたとえとしても使われます。
浅葱色は着物にも多く用いられますが、俳句の世界ではどこか儚く、少し寂しげな空の色を思わせることから秋の季語となっています。そしてアサギマダラも秋まで舞い続けます。
もしアサギマダラに出会ったら、透けるように淡く美しい浅葱色の翅を、ぜひゆっくりと観察してみてください。
