睦月から師走まで、十二ヶ月の季節感を掴むためにご活用ください。和暦の十二ヶ月は西暦とは異なり、二十四節気とも連動しています。睦月には必ず立春が入りますし、霜月には必ず冬至が入ります。
睦月/2月
別名、初春月(はつはるづき)。立春は2月4日で、寒明け。寒さのピークを過ぎた瞬間、わずかな緩みを感じて、梅がほころび始める。和暦の元旦は立春前後の新月からスタートする。梅の花が咲いたのを見て春がきたことを知ることを「梅暦」という。人それぞれの出会いがあり、それぞれの春がある。春は見つける喜びであり、兆しの世界。希望の持ち方も同じ。五感のアンテナを立てて、自分で見つけるもの。目覚めの季節。
如月/3月
別名、小草生月(おぐさおいづき)。西暦では3月。樹木の春は遅いが、小さなくさぐさの春は早く、大地が一気に緑で覆われていく。生命力の強い雑草たちは芽生えると同時に、一気に小さな花を咲かせる。この季節の伝統的な行事は「踏青(とうせい)」で、青を踏むこと。緑の大地を裸足で歩いて、植物の生命力を足の裏からダイレクトにとりいれる昔からの風習。かつてはこの頃、自然と交感する「山入り、浜下り」などの風習が全国にあった。節気では「啓蟄(けいちつ)で、土中の虫が這い出すころ。
弥生/4月
別名、花見月(はなみづき)。西暦では4月。桜が咲いた後、多くの樹木が次々に花を咲かせて、春らんまんのときを迎える。春の花はモクレンやヤマブキなど黄色、ピンクが多い。春雨の季節で、花の雨ともいう。土がよく湿り、夜は水蒸気で朧月がみえる。春の大トリを務めるのは百花の王、大輪の牡丹。牡丹が咲いたら春は終わり。陽気を感じてのびやかな気持ちになる。
卯月/5月
別名、夏初月(なつはづき)。西暦では5月。ゴールデンウイーク中の5月5日が立夏。自分が白いものを着たくなったら、夏の始まり。白い卯の花(ウツギ)を始め、新緑に映える白い花たちが咲く。日に日に盛りあがるように木々が葉を茂らせ、葉ずれの音が鳴り出す。繁殖期を迎えた小鳥たちがよくさえずるので鳥来月(とりくづき)ともいう。高らかに歌う鳥の声に耳を傾けて。
皐月/6月
別名、五月雨月(さみだれづき)。西暦では6月。入梅は6月10日〜。細く淡いクリーム色の栗の花がぽとぽとと落ち始めたら梅雨入りの合図。栗花落(ついり)ともいい、つゆの語源でもある。梅雨どきはアヤメや紫陽花など、水に濡れるとさらに美しくみえる青や紫の花が多く咲く。アンズ、ビワ、サクランボなど果物の季節。夏ではあるが、雨や曇りで日照時間は短い。
水無月/7月
別名、常夏月(とこなつづき)。西暦では7月。梅雨明けの猛暑が始まる月。梅雨の間に漬けておいた梅干しを日向に広げて仕上げるのも、この晴天続きを利用した暮らしの知恵。小さな手仕事は、生きる喜びを与えてくれるもの。大暑は7月22日〜。梅雨の終わりを知らせるのはチリチリと咲く紅白のサルスベリ。サルスベリが咲き始めたら、梅雨明けが近い。
文月/8月
別名、秋初月(あきそめづき)。西暦では8月。立秋は8月7日。夜の虫の音が聞こえ始めたら、秋の始まり。日中は暑い日が続くが、朝夕にふっと涼しさを感じるようになるのがこの頃。日に日に少しずつ高まっていく虫の音。アブラゼミに代わって、ツクツクボウシやヒグラシが鳴き始めることも初秋の合図。激しい夕立や雷が鳴るので鳴神月(なるかみづき)ともいう。モモ、ナシ、スイカなど水菓子の季節。
葉月/9月
別名、秋初月(あきはづき)。西暦では9月。萩月ともいい、ハギの花が咲くころ。色づいた稲穂が頭を垂れ、稲刈りが始まる。台風の季節でもあり、農作物が被害に遭いやすい。「田の実の節句」は八月朔日の行事。新穂を一早く神に捧げて、収穫の無事を祈る。白露は9月7日〜。朝夕の気温差で、草の露が宿るのを露時雨(つゆしぐれ)という。サンマが旬。乾燥しがちなので積極的に肉や魚をとり入れて。
長月/10月
別名、夜長月(よながづき)。西暦では10月。日が落ちるのが早くなり、晩秋の気配が漂うころ。キンモクセイの香りが漂い始めると秋がぐっと深まり、セーターが必要になる。虫の音が弱っていく晩秋は日本人がもっとも愛した季節。終わりゆく命に思いを馳せ、生々流転のめぐりをもっとも感じるとき。栗やマツタケ、シメジ、シイタケなどキノコの季節。
神無月/11月
別名、時雨月(しぐれづき)。西暦では11月。紅葉のピークを迎え、山々が美しく彩られるころ。立冬は11月7日。木の葉がハラハラと舞い落ち、虫やカエルたちが冬ごもりする冬の始まり。新そば、落花生、小豆の季節。比較的穏やかな天候が続き、小春日和と呼ぶのはこの頃。そのおだやかな暖かさに誘われて、季節外れの花がぽつんと咲く「帰り花」も愛らしい。
霜月/12月
別名、霜降月(しもふりづき)。西暦では12月。「冬の大三角」を見つけよう。江戸時代、天狼、青星と呼ばれてきたシリウスは冬の季語。南の空に青く輝くシリウス。このシリウスの右上に赤く輝いている星を見つけたら、それがペテルギウス。その2星と正三角形を作る位置にあり、白く輝いているのがプロキシオン。この3星が冬の大三角。冬至は12月21日。
師走/1月
別名、春待月(はるまちづき)。西暦では1月。西暦元旦から数日は青空が広がり、初詣日和になることが多い。1月6日が小寒で、ここからが寒の入り。ぐっと寒さが増してくる。大寒は1月20日〜。小寒から大寒までの約30日間が「寒の内」。一年でもっとも寒さが厳しいが、寒稽古という言葉もあるように気が引き締まって、感覚がもっとも研ぎ澄まされるときでもある。じっと春を待っている冬芽のように自分の中心軸を確かめ、心を澄ませるとき。