1. 12月の冬薔薇

  2. 12月の柚子

  3. つはぶきは希望の花

  4. 蜂の巣

  5. 日本三大薬草センブリ

  6. ミゾソバとアゲハ

  7. 露草

  8. 野紺菊

  9. ノボリリュウ

  10. マムシグサ

  11. 半夏生

  12. 日本茜

  1. 北斎の描くセンス・オブ・ワンダー

  2. 和暦の季節感を味わえる時間軸

  3. 見返しのカラー図版

  4. お客様からの喜びの声2025

  5. お客様からの喜びの声2024

  6. ご注文の際の注意点

  1. 第二候 黄鶯睍睆 うぐいすなく

  2. 第一候 東風解凍 はるかぜこおりをとく

  3. 第七十二候 鶏始乳 にわとりはじめてとやにつく

  4. 第七十一候 水沢腹堅 さわみずこおりつめる

  5. 第七十候 款冬華 ふきのはなさく

  6. 第六十九候 雉始雊 きじはじめてなく

  7. 第六十八候 水泉動 しみずあたたかをふくむ

  8. 第六十七候 芹乃栄 せりすなわちさかう

  9. 第六十六候 雪下出麦 ゆきわたりてむぎのびる

  10. 第六十五候 麋角解 さわしかのつのおつる

  11. 第六十四候 乃東生 なつかれくさしょうず

  12. 第六十三候 鱖魚群 さけのうおむらがる

七十二候 植物

第五十四候 楓蔦黄 もみじつたきばむ

紅葉シーズン到来


七十二候は「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」を迎え、いよいよ紅葉シーズンに入りました。

紅葉といえば秋というイメージですが、紅葉は樹木たちが自ら光合成をやめ、休眠を始めた最初の姿であり、樹木たちが冬に入ったともいえます。紅葉は立冬を迎えると一気に進んでいきますが、今はまだほんの始まりの時期。

山でちょうど今、紅葉のトップを切っているのは、ツタウルシ(蔦漆)やヤマウルシ(山漆)です。ほかの木々がまだ緑のうちに真っ赤に紅葉するので、ウルシ科の植物の所在がよくわかる季節です。とくにツタウルシは樹木に絡みついて這い上がるので、あちらこちらで木の幹が燃えているような不思議な光景が見られます。とても美しいのでつい触りたくなりますが、触ると皮膚がかぶれますので、眺めるのみです。

写真提供:Namiko Izakwa

森の中には瑠璃色の玉をつけた真っ赤な枝が落ちています。クサギの実です。

写真提供:Namiko Izakwa

山粧う


中国南宋時代の儒学者、呂祖謙(りょそけん)が編纂した『臥遊録(がゆうろく)』や、郭熙(かくき)の子、郭思(かくし)が編纂した山水画論『林泉高致(りんせんこうち)』に収められている以下の詩が元になっています。

春山淡冶にして笑うが如く、
夏山蒼翠にして滴るが如く、
秋山明浄にして粧うが如く、
冬山惨淡として眠るが如く

『臥遊録』

画家が山を描くときの心得として、「春は山が笑うが如く、夏は滴るが如く、秋は粧うが如く、冬は眠るが如く描くのがよい」としたものです。いわば絵の極意として書かれたものでしたが、この詩は日本の文人たちに古くから愛誦され、日本全国、山と川に恵まれた日本の四季を端的に表現できる便利な季語として、すっかり定着して今日に至っています。

照葉


夏には緑一色だった山がだんだん色づいてくると、その山の植生の豊かさがはっきりとわかります。黄、橙、辛子色、赤、紫、その複雑さはしばしば錦の織物に例えられますが、日本はイロハモミジやヤマモミジをはじめとするカエデの種類が他国に比べて圧倒的に多いというだけでなく、紅葉、黄葉する植物がたくさんあるためです。

真っ赤に紅葉することが名前の由来になったニシキギ(錦木)、ヤマボウシ(山法師)、コナラ、ケヤキ、ハゼノキなどのウルシの仲間や、ナツハゼ、ドウダンツツジ(灯台躑躅)などのツツジの仲間、黄葉が美しいのはクロモジなどのクスノキの仲間、カツラやダンコウバイ、クヌギ、カラマツ、イチョウなど数えきれないほどあります。

前回、初冬の時雨(しぐれ)が紅葉を一層、鮮やかに染めるのだと書きましたが、その逆に陽射しを浴びて煌めく紅葉をさす「照葉(てりは)」という季語もあります。西日に照らされると眩しいほど輝いて、落日の空が神々しく感じられる日があります。雨に濡れる紅葉もよし、照り映える紅葉もよし。紅葉シーズンは美しく、豊かな日本を目で味わえるとき。

日本の11月は「小春」と呼ばれるようにぽかぽかとした晴れの日も多く、紅葉は日中の天気がよく、夜の冷気が増すほど鮮やかになります。この寒暖の差が少ない年は鮮やかな紅葉が見られないまま終わってしまいます。めりはりがないと、なんでもぼんやりしてしまうものですね。今年はどうなるでしょうか。

「経霜楓葉紅」という禅語があります。「霜を経て楓葉(ふうよう)紅(くれない)なり」。楓の葉が厳しい霜を経て真っ赤に紅葉するように、人も苦難を経験することによって深みを増し、見事な人物になっていくという意味です。冬野菜も、寒いほど甘味を増して美味しくなります。

文責:高月美樹

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