1. 12月の冬薔薇

  2. 12月の柚子

  3. つはぶきは希望の花

  4. 蜂の巣

  5. 日本三大薬草センブリ

  6. ミゾソバとアゲハ

  7. 露草

  8. 野紺菊

  9. ノボリリュウ

  10. マムシグサ

  11. 半夏生

  12. 日本茜

  1. 北斎の描くセンス・オブ・ワンダー

  2. 和暦の季節感を味わえる時間軸

  3. 見返しのカラー図版

  4. お客様からの喜びの声2025

  5. お客様からの喜びの声2024

  6. ご注文の際の注意点

  1. 第三候 魚氷上 うおこおりをいずる

  2. 第二候 黄鶯睍睆 うぐいすなく

  3. 第一候 東風解凍 はるかぜこおりをとく

  4. 第七十二候 鶏始乳 にわとりはじめてとやにつく

  5. 第七十一候 水沢腹堅 さわみずこおりつめる

  6. 第七十候 款冬華 ふきのはなさく

  7. 第六十九候 雉始雊 きじはじめてなく

  8. 第六十八候 水泉動 しみずあたたかをふくむ

  9. 第六十七候 芹乃栄 せりすなわちさかう

  10. 第六十六候 雪下出麦 ゆきわたりてむぎのびる

  11. 第六十五候 麋角解 さわしかのつのおつる

  12. 第六十四候 乃東生 なつかれくさしょうず

七十二候 生き物 自然

第三十八候 寒蝉鳴 ひぐらしなく

きょうは七十二候の「寒蝉鳴(ひぐらしなく)」のお話です。

今年はカナカナの声、もう聞かれたでしょうか。都会ではなかなか聞く機会がないので、カナカナの声を聞きたい、と思う人は多いようです。

季節によって変わる、セミの声


セミはそれぞれ鳴き声の違いがはっきりとわかり、季節によって変化していきますので、セミの声で時の経過を感じることが多いかと思います。

私が最初にセミの声を聞くのは5月下旬ごろ、田植えのときに聞こえてくる「エゾハルゼミ」です。田んぼの脇の木立ちから、カナカナに似た優しい鈴のような鳴き声が聴こえてきます。

エゾハルゼミ

次に夏の始まりを感じさせてくれるのは、「アブラゼミ」。「ジーーーーッ」とか「ジリジリジリジリ」と聞こえます。時々、「ジリッ」と小さく鳴いて、飛んだりしますね。梅雨の前にチラッと鳴き、梅雨の合間にも、ちょっと遠慮がちに「ジーッ」と鳴き出したりするのを、家の中で静かに聴いているのが私は好きです。

アブラゼミ

そして夏の盛りといえば「ミーン、ミンミンミンミン、ミーーーン」。「ミンミンゼミ」です。このセミは暑い日盛りが好きなようで、梅雨明けの猛暑が始まると、いよいよ勢いよく鳴き出します。「ミーン」という声を聞いた途端に、急に暑いと感じるのは面白いものだなと思います。関西では「シャシャシャシャシャシャ」と鳴く「クマゼミ」が夏の代表でしょうか。

ミンミンゼミ

クマゼミ

晩夏に聞こえてくるのが、「ツクツクボウシ」。「オーシーツクツク、オーシーツクツク、オーシーツクツク、ツゥイヨー、ツゥイヨー、ジーーーー」。次第にアップテンポになったあと、長く尾を引くあのメロディ。アブラゼミなどに混じってツクツクボウシが鳴き始めると、ちょっと切ない気持ちになります。夏も峠を越え、折り返し点に入ったな、と感じる瞬間です。

ツクツクボウシ

そして「ヒグラシ」。涼しげな高い金属的な声は、「キキキキ、ケケケケケ、カカカカ」とも聴こえますが、やっぱり「カナカナ」ですね。漢字では「蜩」「日暮らし」または「かなかな」でも正式な季語になります。「蝉(せみ)」は夏の季語ですが、「法師蝉(ほうしぜみ)」や「蜩(ひぐらし)」は秋の季語。

ヒグラシ

ヒグラシの「蝉時雨」


「秋蝉」とか「寒蝉」は現在、法師ゼミ(ツクツクボウシ)とヒグラシ、どちらにも使われる季語ですが、時期的に晩夏になってから鳴き始めるのはツクツクボウシですので、本来は法師ゼミをさしていたと思われます。ただ日本人の感性として涼しげで切なく感じるヒグラシも、いつしか秋の季語となり、日本の七十二候ではヒグラシのルビがついています。

ヒグラシはツクツクボウシよりもだいぶ早く、7月から鳴いているのですが、「日暮らし」という名前の通り、暑い日中が苦手で、早朝か夕方、十分涼しくなってから鳴きます。そのため、薄暗いところや、涼しい時間帯の中で聴いていることが圧倒的に多いわけです。記憶の蓄積なのか、カナカナの声を聞いた途端に「ああ、涼しい」と感じるのは不思議なもの。

ましてや立秋をすぎると、より一層、もの悲しく、涼しげに感じます。気温が上がらない涼しい日や、昼もなお暗い杉林のような場所では、昼間でも大勢で鳴いていますので、「カナカナ」の大合唱はまさに「蝉時雨」。

「涼しさ」を浴びるシャワーのようで、嫌いな人はあまりいないのではないでしょうか。そしてやっぱり、秋のはじめに、終わりゆく夏を惜しみながら聞くのが、もっとも心に染み入ります。

今年聞けなかった方のために、動画を送ります。
よろしければ、聴いてみてください。

文責・高月美樹

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