1. 第三十一候 温風至 あつかぜいたる

  2. 第三十候 半夏生 はんげしょうず

  3. 第二十九候 菖蒲華 あやめはなさく

  4. 第二十八候 乃東枯 なつかれくさかるる

  5. 第二十七候 梅子黄 うめのみきばむ

  6. 第二十六候 腐草為螢 くされたるくさほたるとなる

  7. 第二十五候 蟷螂生 かまきりしょうず

  8. 第二十四候 麦秋至 むぎのときいたる

  9. 第二十三候 紅花栄 べにばなさかう

  10. 第二十二候 蚕起食桑 かいこおきてくわをはむ

  11. 第二十一候 竹笋生 たけのこしょうず

  12. 第二十候 蚯蚓出 みみずいずる

七十二候 風習 食べ物

第二十七候 梅子黄 うめのみきばむ

七十二候は芒種の末候「梅子黄(うめのみきばむ)」を迎えました。

梅雨には乾物類がおすすめ


日照不足になりがちな梅雨どきは太陽のエネルギーをたっぷりと含んだ乾物類を食べるのがおすすめです。夏至は一年でもっとも日が永くなるときですが、日本の夏至はちょうど梅雨のさなか。夏らしさを感じないのは雨や曇りの日が多く、日照時間が少ないためです。

その太陽のエネルギーを補ってくれるのが乾物類です。天日干しをしたものには、太陽のエネルギーがたっぷり入っています。元々、乾物類は冬の保存食として発達した伝統食です。高野豆腐、ひじきなどの海草類、寒天、木耳、干椎茸、切り干し大根など、戸棚に眠らせている乾物類はありませんか?

乾物類は夏を越すと一気に風味が落ちてしまいます。在庫を一掃するくらいのつもりで、積極的に乾物類をとりましょう。保存食はむかしの人たちの知恵の結晶ともいえる日本の財産。カルシウムや鉄分、アミノ酸やビタミンDなど、生の食品にはない、すぐれた栄養価があります。昔の人々の深い叡智を感じながら、梅雨をのりきりましょう。

また「梅雨寒」という季語もあるように、梅雨の季節は気温は低いのですが、湿気が多いため、蒸し暑さからつい薄着をしたり、のどごしのよい冷たいものを摂りがちです。乾物類には肌のトラブルを解消し、冷えたカラダをあたため、新陳代謝を高める効果があります。

夏を乗り切る梅干しの力


日本人は雨期を「梅雨」と呼ぶように、梅雨どきは梅の実が黄ばむ季節。その梅に塩をまぶして漬け込み、梅雨が明けて晴天が続く頃に、梅を干します。わが家では数週間前に庭の梅の実を漬け始め、すでに梅干しができあがりつつあります。

梅の実はちょうど梅雨入りの頃に浸け始め、梅雨明けの猛暑が続く頃、土用干しすることで完成します。梅干しも夏の太陽の光を浴びて、完成される保存食です。天日干しをすると、みるみるうちにシワが寄り、たくましい姿に変身するのをみていると、なんだか無性にうれしくなります。

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もっとも食中毒をおこしやすい雨期に梅の実が実り、その梅を使って、もっとも殺菌力の強い梅干しが完成し、夏を乗り切る力を与えてくれる。自然の摂理は見事なものだと思います。夏バテや熱中症予防にも最適な梅干し。

梅干しを塩漬けすると数日でびっくりするほど水が上がってきます。この梅酢もさまざまな活用法があります。わが家ではちょうど今が田んぼの草取りの季節。熱中症になりがちなので、この梅酢を薄めた水を飲んでいます。

「いいあんばい」で日々を過ごす


ところで、明治生まれの祖母は「いいあんばい」という言葉をよく使っていました。「湯加減はどう?」「いいあんばいですよ」。

「あんばい」が「ちょうどよい」ことを意味することは、そんな会話から自然に覚えたのですが、あんばいが「塩梅」であることを知ったのは、大人になってからでした。いい湯加減、いいさじ加減、いい塩梅。物事にはすべて「いいあんばい」があり、今は日本人の繊細な思いやりを含んだ言葉として、感じられます。何事もやり過ぎず、そして臆することなく、いい塩梅に。

ちょっとしたことでもていねいに、タイミングを読んで、お天道様と相談をする。そんなふうに心がけて、日々を過ごしたいと思います。

「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからずとなり。この分け目を知ること、肝要の花なり」―『風姿花伝』

世阿弥のいう花は、どんな小さな物事の中にも宿っているのではないでしょうか。「神は細部に宿る」ともいいますが、小さなことの分け目や、気持ちを読める人は、めにみえない大きな世界や、自然の摂理をよく知っている人なのではないかと思うのです。日々の暮らしの中に、小さな花を咲かせていきましょう。

文責:高月美樹

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