1. 第二十七候 梅子黄 うめのみきばむ

  2. 第二十六候 腐草為螢 くされたるくさほたるとなる

  3. 第二十五候 蟷螂生 かまきりしょうず

  4. 第二十四候 麦秋至 むぎのときいたる

  5. 第二十三候 紅花栄 べにばなさかう

  6. 第二十二候 蚕起食桑 かいこおきてくわをはむ

  7. 第二十一候 竹笋生 たけのこしょうず

  8. 第二十候 蚯蚓出 みみずいずる

  9. 第十九候 蛙始鳴 かわずはじめてなく

  10. 第十八侯 牡丹華 ぼたんはなさく

  11. 第十七候 霜止出苗 しもやみてなえいずる

  12. 第十六候 葭始生 あしはじめてしょうず 

七十二候

第二十二候 蚕起食桑 かいこおきてくわをはむ

七十二候では「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」を迎えました。

青や紫の花が多くなってきました。

紫陽花もつぼみをつけています。

卯月(現在の5月頃)の別名は夏の初めの夏初月(なつはづき)、薔薇の香りが漂う清和月(せいわづき)、田植えをする植月(うえづき)の他、今はあまり使われなくなった木の葉採月(このはとりづき)があります。

猫の手も借りたいほど忙しい時期


この木の葉は桑の葉のことで、蚕に食べさせる桑の葉を摘むのに忙しかったためです。何度か休眠を繰り返しながら成長した蚕が、最後に猛然とした食欲で桑の葉を食べると、いよいよ糸を吐いて繭を作り始めます。かつて絹は、日本の重要な産業のひとつでした。農家は蚕の世話と田植え、そして地域によっては麦の収穫も重なって、猫の手も借りたいほど忙しい時期でした。

蚕は新鮮な桑の葉しか食べず、夜中でも食べ続けます。食欲旺盛な蚕たちを満足させることは繭の出来にも影響するため、桑の葉を採ることは大事な作業でした。「猫の手も借りたい」という言葉はここからきており、猫は大切な蚕をねずみから守ってくれるため、猫を貸し借りすることもあったようです。猫の手は役に立たないものの例えになっていますが、かつては居てくれるだけで十分役に立っていたのです。

絹は莫大な利益を生み出し、繁栄をもたらしました。日本の養蚕は江戸時代から全国で行われていましたが、もっとも盛んだったのは大正から昭和初期。日本の輸出の主力製品は絹で、世界市場の6割を占めていた時代もあります。日本製の品質のよい絹は「ジャパンシルク」と呼ばれ、高値で取り引きされていました。

重要な産業に関わる言葉たち


絹は繁栄の証であり、長い年月、つねに蚕のそばにいて大事にされていた猫にも、福を招くイメージが重なっていきました。絹産業が衰退した後、商売繁盛の縁起物となったのがまねき猫です。

卯月の七十二候には「蚕盛んに桑を食む」の他にも、「紅花栄う」「麦の穂実る」など、かつての重要な産業に関わる言葉が盛り込まれています。「麦秋」も卯月の異名です。

「蚕時雨(こしぐれ)」という言葉があります。蚕が桑の葉を食べる音のこと。静かに小雨が降っているような、サーッという心地よい音です。そんな静かな雨が降ったら、新緑から滴り落ちる青時雨(あおしぐれ)を眺めつつ、蚕が葉を食べる音はこんな音かな、と想像してみてください。

この時期に旬を迎えるそらまめは、細長い豆の莢(さや)が蚕の姿に似ていることから「蚕豆」と書きます。


文責:高月美樹

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